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マーシャル便り


写真屋

ある日、もう午後4時を過ぎた頃に、運輸通信省のアドミニストレーション(日本流に言えば「官房」でしょうか)の秘書嬢から電話がかかってきました。
「斎藤さん、カメラをいま持っているか?」私がいつも腰のバンドにデジカメを付けているのを知っているからなのですが、持っているよ と言うと、直ぐにキャピトル(国会)に来てくれ と言います。大臣の写真を撮ってくれと言うのです。
もう皆が帰る頃になんとまあと思いましたが、承諾して大臣の部屋に行くと、日本と台湾のビザの為の写真だと言うのです。勤務先では、パスポートの写真が要ると言っては、既に何人かは私の所にきているのですが、大臣からは初めてです。
大体、運輸通信大臣には赴任の時にも挨拶には行っていないえらーい人なのです。

(写真18−1 キャピトル マジュロ市内の中心部にあるきれいなビルです。大統領以下各大臣が居て、ここで国会が開かれます。)

写真を撮るのは簡単です。
大きさを変えて2枚撮って本人にも見せてOKと言うので、「じゃ、明日プリントアウトするね」と言って帰ろうとすると、「いや、今日要る」と言うのです。
写真を今日中に台湾大使館と日本大使館へ持って行く必要があると言います。しかも大臣は明日出発する と言うのです。
いつもは何事もゆっくりのマーシャル時間なのに 何を言うか? とは思いましたが、「今自宅のプリンターは故障中のためオフイスのプリンターを使う必要があり、且つカメラのデーターをコンピューターに取り込むのは自宅のコンピューターでしか出来ないよ。従って一度自宅へ戻りそれからオフイスへ行きプリントする必要がある」と説明しましたが、そうしてくれと言います。
で、秘書嬢が自分の車で私の家まで送ると言います。後をついてゆくと、あちこちのフロアをうろうろしています。「何を探しているの?」と聞きますと、車のキイをどこかに置き忘れたのを探している と言います。
事態の緊急性とやっていることがどうもマッチングしません。私は、タクシーで行くからオフイスで待ってて下さい と言って、家まで20分以上かけて戻り、それからまたタクシーでオフイスへ行き写真4枚をプリントアウトしたのは、もうかれこれ7時近くになっていました。

雲 (写真は本文と関係ありません)

プリンターから出てきたばかりの大臣の写真を渡すと、秘書嬢はハサミはないか?と言います。
ハサミを渡すと、左手に写真右手にハサミを持って切ろうとします。大きさは?と聞くと「パスポートサイズ!」と言います。
私は、悪いことは言わない(っては英語で言えないので言ってませんHi!)VISA用写真は国によって大きさが違うから聞いてから切った方がいい と言うと、「OK!」と、とんだ一日が終わりました。

翌日、秘書嬢にどうだったと聞いたら、やはり今朝持っていったと言います。
大使館では、「こちらで切ります」と言われ写真ごと渡したとのこと、まあ大使館の判断は賢明と言うべきでしょう。
その日の夕方大臣は、ハワイ経由台湾へ向け出発したとラジオも報じていたそうです。ところが、この大臣の訪台湾、訪日に関連したプロジェクトの日本人の方が言うには、いや出発したと思っていたら翌日電話がかかってきたからまだマジュロにいると言うのです。結局、本当に出発したのは、写真騒動があった日から2日後のことでした。

お墓 (写真は本文と関係ありません)

この国では、時間はゆっくり進みます。それが分かっているつもりでも、長年日本に暮らしていたため「大変だ!」と言う時に、つい体内時計が日本時間に戻ってしまう様です。
しばらくしてから、しまった、あまりあわてるんではなかった と思うのですが、たいていは後のまつりです。しかも、そう思って葛藤するのは自分だけで、周りには悠久のマーシャル時間が流れています。

マジュロ空港の夕日

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